ディフェンシブ銘柄、セクターとは
米国株においてディフェンシブとは、景気の影響を受けにくく安定した業績を維持しやすい、不況に強い、下落耐性があるといった銘柄、セクターのことです。具体的には生活必需品、ヘルスケア、公益事業、通信、食品、鉄道、ゴミ回収などです。
これらの銘柄は不況であっても国民にとって欠かせない事業をおこなっているため、日常的に必ず利用されるので安定しておりディフェンシブだと言えます。例えば国民は不況であっても生活必需品は必要ですし、病院や薬も必要、電話やパソコンなどの通信、ランチではマクドナルドやピザ、毎日ゴミ回収は必要なわけです。
米国個別株を持つのであれば、ある程度時価総額が大きく配当を出す企業が望ましいです。なぜならディフェンシブ銘柄は安定しているとはいえ、大きな株価上昇が見込める銘柄は少ないからです。したがって、配当を出す銘柄で配当の再投資をしながら保有する戦略に向いていると言えます。
ディフェンシブ配当銘柄の条件
今回は、S&P500に選ばれている銘柄のうち、時価総額10ビリオン(1ドル100円計算で1兆円以上)、配当利回りが1%以上ある銘柄をいくつかセクターごとに選んでみました。ただし株価によって配当利回りが変わるので、2025年現在が1%以上であってもこの記事を見た時点では変わっている場合があるので注意してください。また、ディフェンシブかどうかは個人的な感覚で決めています。
通信セクターのディフェンシブ配当銘柄
ティッカー | 名前 | 業種 | 一株($) | 配当利回り | 連続増配 | |
1 | TMUS | TモバイルUS | 電話 | 242.6 | 1.48% | 2年 |
2 | T | AT&T Inc | 電話 | 27.7 | 4.20% | – |
3 | VZ | ベライゾン・コミュニケーションズ | 電話 | 43.9 | 6.46% | 20年 |
4 | FOX | Fox Corp Class B | 番組 | 51.8 | 1.08% | 4年 |
代表的なETF:VOX、IXP
一般消費財セクターのディフェンシブ配当銘柄
ティッカー | 業種 | 一株($) | 配当利回り | 連続増配 | ||
1 | HD | ホーム・デポ | ホームセンター | 380.7 | 2.47% | 16年 |
2 | MCD | マクドナルド | レストラン | 318.6 | 2.31% | 49年 |
3 | LOW | ロウズ | ホームセンター | 234.2 | 2.07% | 53年 |
4 | SBUX | スターバックス | レストラン | 85.5 | 2.82% | 15年 |
5 | YUM | ヤム・ブランズ | レストラン | 148.0 | 1.95% | 8年 |
6 | EBAY | ebay | eコマース | 71.8 | 1.66% | 7年 |
7 | TSCO | トクターサプライ | 農家向け小売・ストア | 52.9 | 1.80% | 16年 |
8 | ROL | ロリンズ | 害虫駆除 | 57.0 | 1.22% | 4年 |
9 | IP | International Paper Co | 包装紙・段ボール | 50.1 | 3.60% | – |
10 | DRI | ダーデン・レストランツ | レストラン | 211.6 | 2.72% | 4年 |
代表的なETF:VCR、RXI
一般消費財セクターは、銘柄の業種がかなり幅広いので全ての銘柄がディフェンシブというわけではなく、ある程度国民の生活に必要な事業という観点から選んでいます。
生活必需品セクターのディフェンシブ配当銘柄
ティッカー | 名前 | 業種 | 一株($) | 配当利回り | 連続増配 | |
1 | PG | プロクター・アンド・ギャンブル | 日用品 | 163.2 | 2.54% | 70年 |
2 | KO | コカ・コーラ | ドリンク | 72.0 | 2.93% | 64年 |
3 | PM | フィリップモリス | タバコ | 170.4 | 3.38% | 17年 |
4 | PEP | ペプシコ | ドリンク・ペプシコーラ・スナック | 131.9 | 4.36% | 54年 |
5 | MO | アルトリア | タバコ | 58.8 | 7.41% | 56年 |
6 | MDLZ | モンデリーズ・インターナショナル | 菓子 | 65.3 | 3.01% | 13年 |
7 | CL | コルゲート・パーモリーブ | 歯磨き粉・日用品 | 91.2 | 2.37% | 63年 |
8 | KVUE | ケンビュー | ヘルス製品・絆創膏など | 24.1 | 3.53% | 1年 |
9 | KMB | キンバリー・クラーク | ティッシュ・衛生用品 | 139.0 | 3.75% | 54年 |
10 | KR | クローガー | スーパー | 68.8 | 2.03% | 19年 |
11 | SYY | シスコ | 食品卸売り | 72.4 | 2.89% | 57年 |
12 | STZ | コンステレーション・ブランズ | ビール・ワイン・酒 | 195.6 | 2.23% | 5年 |
13 | HSY | ハーシー | チョコレート・菓子 | 158.4 | 3.42% | 15年 |
14 | KHC | クラフト・ハインツ | 食品・ケチャップ | 27.7 | 5.90% | – |
15 | GIS | ゼネラル・ミルズ | 食品・スナック・シリアル | 55.1 | 4.48% | 5年 |
16 | K | ケラノバ | プリングルス・スナック | 82.3 | 2.82% | 1年 |
17 | ADM | アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド・カンパニー | トウモロコシ・小麦・食品加工 | 50.1 | 4.25% | 53年 |
18 | CHD | チャーチ・アンド・ドワイト | 重曹・洗濯・清掃品 | 95.8 | 1.27% | 29年 |
19 | MKC | マコーミック | 食品・スパイス・調味料 | 75.4 | 2.45% | 38年 |
20 | SJM | J.M.スマッカー | 加工食品小売り | 113.4 | 3.90% | 27年 |
21 | TAP | モルソン・クアーズ・ビバレッジ | ビール・ブルームーン・Carling | 56.8 | 3.37% | 4年 |
22 | CPB | キャンベルズ | 缶スープ・スナック | 36.0 | 4.41% | – |
代表的なETF:VDC、KXI
ヘルスケアセクターのディフェンシブ配当銘柄
ティッカー | 名前 | 業種 | 一株($) | 配当利回り | 連続増配 | |
1 | JNJ | ジョンソン・エンド・ジョンソン | 医薬品・医療機器 | 151.3 | 3.40% | 64年 |
2 | ABBV | アッヴィ | 製薬・免疫・腫瘍 | 184.0 | 3.54% | 53年 |
3 | UNH | ユナイテッドヘルス・グループ | 米国最大級医療保険・処方箋薬 | 291.9 | 3.00% | 15年 |
4 | ABT | アボット・ラボラトリーズ | 医薬品・心血管疾患・糖尿病機器など | 134.8 | 1.76% | 54年 |
5 | MRK | メルク | 医薬品・感染症・がん治療薬・ワクチン | 76.0 | 4.13% | 14年 |
6 | AMGN | アムジェン | バイオ製薬・貧血治療薬・がん治療薬など | 272.4 | 3.56% | – |
7 | GILD | ギリアド・サイエンシズ | バイオ医薬品・ウイルス治療薬 | 102.5 | 3.15% | 10年 |
代表的なETF:VHT、IXJ
資本財セクターのディフェンシブ銘柄配当
ティッカー | 名前 | 業種 | 一株($) | 配当利回り | 連続増配 | |
1 | CAT | キャタピラー | 重機メーカー・パワーシステム・機関車 | 353.5 | 1.64% | 30年 |
2 | DE | ディア | 農業機器メーカー | 531.4 | 1.16% | 4年 |
3 | UNP | ユニオン・パシフィック | 鉄道 | 231.4 | 2.33% | 18年 |
4 | LMT | ロッキード・マーチン | 防衛請負企業 | 468.3 | 2.85% | 22年 |
5 | WM | ウエイスト・マネジメント | ゴミ回収・リサイクル | 229.9 | 1.42% | 22年 |
6 | RSG | リパブリック・サービシズ | ゴミ回収・リサイクル | 247.7 | 0.95% | 22年 |
代表的なETF:VIS、EXI
公益事業セクターのディフェンシブ銘柄配当
ティッカー | 名前 | 業種 | 一株($) | 配当利回り | 連続増配 | |
1 | NEE | ネクステラ・エナジー | 電力・フロリダ州最大 | 75.0 | 3.01% | 31年 |
2 | SO | サザン | 電力・天然ガス・ジョージア州・他2州で供給 | 88.7 | 3.34% | 25年 |
3 | DUK | デューク・エナジー | 電力・天然ガス・カロライナ州・他4州で供給 | 116.2 | 3.68% | 20年 |
4 | AEP | アメリカン・エレクトリック・パワー | 電力・天然ガス・11州で供給 | 103.0 | 3.65% | 15年 |
代表的なETF:VPU、JXI
ということで、セクター別にディフェンシブで配当利回りが1%以上ある銘柄を選んでみました。もちろん自分もディフェンシブで配当を出す個別銘柄は保有しており、次の銘柄です。MCD、KO、PG、JNJ、UNP、WMT、RSG、WM、CL、PEPです。これらの銘柄は連続増配銘柄かつ業績と株価が安定しているので、配当を再投資しながら資産を増やしていく運用に向いています。
ディフェンシブセクターの騰落率
また過去を振り返ってもディフェンシブ銘柄、セクター暴落に強いのでポートフォリオに組み込むことで全体の騰落率を下げることができます。例えばリーマンショック時の各セクターの騰落率は以下のとおりですが、ディフェンシブセクターはとても強く、特に生活必需品セクターは20%台の下落だけでした。
- 生活必需品 -29.3%
- ヘルスケア -35.1%
- 公益事業 -38.1%
- 通信サービス -48.8%
- 情報技術 -50.5%
- 一般消費財 -57.1%
- 素材 -58.1%
- 資本財 -58.2%
- エネルギー -68.1%
- 不動産 -69.6%
- 金融 -74.0%
セクターETFは賢明な選択
自分も保有していますが、多くの人にとってセクターETFは賢明な選択だと言えます。例えばよく分かっていないヘルスケアセクターのバイオ関連株などを保有しても、本当に理解できる人は少ないので、暴落時に必ず不安になって売りたくなります。ところがETFの場合、個別株と違って倒産暴落塩漬けのリスクが無いので、長期投資家は安心して保有することができるのです。
例えば、ヘルスケアセクターと通信セクターの銘柄が欲しいんだけど、イマイチ個別はリスクが高そうだからセクターETFにしておくといった使い方です。また、セクターETFだけではなく。高配当ETFのVYM、増配銘柄のVIGなども人気でおすすめです。