米国株・エネルギーセクターについて
早速ですが、米国株のエネルギーセクターについて、以下の内容で解説していきます。
エネルギーセクター
- エネルギーセクターとは?
- 特徴
- 概要・ETF
- トップ20銘柄
- エネルギーセクター vs S&P500
- エネルギーセクタートップ10 vs S&P500
- 騰落率
これらの情報を知っておくことで、エネルギーセクターの基本的な内容については把握できると思います。
結論から言っておくと、エネルギーセクターはボラティリティが高く、安定しないセクターです。
基本的には、よっぽど自信と知識のある人以外触らないことをおすすめします。また、パフォーマンスもS&P500より低いです。
1. エネルギーセクターとは?
エネルギーセクターとは、主に、石油、ガス探査・開発、ガス精製・販売、ガス貯蔵・輸送などの業種が含まれるセクターです。
また、米国株全11セクターのうちの一つです。
エネルギーセクターは全て石油とガス関係なので、考え方としては「エネルギーセクター=石油」だと思って大丈夫です。
似たような業種で、電力、水道、風力発電などは公益事業セクターに分類されます。
2. 特徴
エネルギーセクターの特徴としては、以下の通りです。
エネルギーセクターの特徴
- 景気後退~不況に強いセクター
- 他国、OPECなどに大きく左右される
- ボラティリティが高く安定しない
- 配当利回りは高め
- 連続増配は安定しない
- なくては困るセクター
- セクター全体ではS&P500を下回る
2-1. 上流と下流
石油関連は大きく分けて「上流部門」と「下流部門」に分かれます。
(上流部門)
上流部門では主に、開発、生産を行います。
(下流部門)
下流部門では主に、輸送、精製、販売を行います。
2-2. 景気局面
エネルギーセクターは、景気後退から不況にかけて強いセクターです。
理由としては、景気後退や不況であっても現在社会ではガソリンなどが必ず必要だからです。
例えば、車社会において国民は必ず車に乗るので、ガソリンが必要です。また、船や飛行機の燃料も必要なので、景気の良し悪しにかかわらずガソリンや燃料は必ず必要とされます。
そういったことから、エネルギーセクターは景気後退、不況の面でも強いセクターだと言えます。
一方で、エネルギーセクターは他国やOPECに加盟している石油輸出国の経済的影響をもろに受けます。
例えば最近では、ロシアがサウジアラビアからの協調減産に合意せず、その結果原油先物が暴落しました。
このようにして、エネルギーセクターは必ず必要とされるセクターですが、他国の影響を受けやすいので、ボラティリティが高く安定しない傾向があります。
3. 概要・ETF
エネルギーセクターは、米国株全11セクターのうちの1つです。
英語表記は以下の通りです。
- Energy
どこのサイトでも「Energy」と書かれています。基本的にはこれ以外にありません。
3-1. 銘柄数
所属 | 銘柄数 |
エネルギーセクター | 315 |
S&P500 | 26 |
ダウ30 | 2 |
セクターETF(VDE) | 130 |
セクターETF(IXC) | 62 |
現在米国に上場しているエネルギーセクター全銘柄数は315銘柄です。
そのうち、S&P500に含まれるのは26銘柄です。
ダウ30に選ばれているエネルギーセクターの銘柄は2銘柄で、以下の通りです。(2020年時点)
- XOM|Exxon Mobil Corporation
- CVX|Chevron Corporation
この2社は有名なので、ある程度米国株に慣れている人であれば聞いたことがあると思います。
日本でもエクソンモービルのガソリンスタンドは多く見かけるので、知っている人も多いでしょう。
3-2. エネルギーセクターETF
代表的なエネルギーセクターのETFは以下の二つです。
- バンガード:VDE
- ブラックロック:IXC
エネルギーセクターのETFを検討する場合は、このどちらかで問題ありません。
バンガード | ブラックロック | |
ETF | VDE | IXC |
国籍 | 米国 | グローバル |
米国籍割合 | 100% | 51.62% |
銘柄数 | 130 | 62 |
経費率 | 0.10% | 0.46% |
設定日 | 2004年9月 | 2001年11月 |
直近利回り | 5.59% | 9.16% |
直近10年リターン | -1.09% | -3.98% |
直近5年リターン | -10.95% | -10.26% |
PER | 20.4倍 | 12.45倍 |
純資産総額 | 3.12B | 841M |
バンガードのETFは米国籍のみで構成されていて、ブラックロックは海外も含めたグローバルな構成です。
ETF純資産はバンガードが約3,120億円、ブラックロックは約841億円なので、バンガードVDEの方が圧倒的に大規模です。※1ドル100円
ちなみに、S&P500(VOO)のETF純資産は約13兆2,380億円です。
3-3. エネルギーセクター内構成比率
エネルギーセクター内のインダストリーは以下の通りです。
インダストリー | VDE |
総合石油・ガス | 45.80% |
石油・ガス探査・開発 | 21.30% |
石油・ガス精製・販売 | 12.40% |
石油・ガス貯蔵・輸送 | 11.50% |
石油・ガス装置・サービス | 8.30% |
石油・ガス掘削 | 0.60% |
石炭・消耗燃料 | 0.10% |
100% |
前述した通り、エネルギーセクターは全て石油とガス関連です。
3-4. エネルギーセクターのPER
エネルギーセクターのPERは以下の通りです。
セクター | 表記 | バンガード | ブラックロック | ||
エネルギー | Energy | VDE | PER 20.4 | IXC | PER 12.45 |
PERは時期によって変わりますが、そもそもETFは分散されているのである程度一定です。
ちなみに、S&P500の直近30年の平均PERは20倍~25倍なので、比較するとすればエネルギーセクターのPERは普通~割安だと言えます。
ただし、エネルギーセクターはS&P500に2.9%程度しか含まれていません。そのため、S&P500とPERの比較をするのは参考程度だと考えておくといいでしょう。
4. トップ20銘柄
エネルギーセクタートップ20銘柄は以下の通りです。
Ticker | Company | Market C | Div | 増配年数 | |
1 | XOM | Exxon Mobil Corporation | 191.38B | 7.96% | 37 |
2 | CVX | Chevron Corporation | 168.79B | 5.89% | 34 |
3 | COP | ConocoPhillips | 45.54B | 4.12% | 3 |
4 | KMI | Kinder Morgan, Inc. | 34.86B | 7.04% | 2 |
5 | PSX | Phillips 66 | 31.06B | 5.21% | 8 |
6 | EOG | EOG Resources, Inc. | 30.19B | 3.01% | 2 |
7 | SLB | Schlumberger Limited | 25.97B | 2.82% | 0 |
8 | MPC | Marathon Petroleum Corporation | 24.07B | 6.50% | 9 |
9 | WMB | The Williams Companies, Inc. | 23.55B | 8.51% | 2 |
10 | VLO | Valero Energy Corporation | 23.40B | 6.95% | 9 |
11 | OXY | Occidental Petroleum Corporation | 16.42B | 0.23% | 17 |
12 | PXD | Pioneer Natural Resources Company | 16.34B | 2.30% | 2 |
13 | BKR | Baker Hughes Company | 16.18B | 4.67% | |
14 | HES | Hess Corporation | 15.99B | 2.01% | 0 |
15 | OKE | ONEOK, Inc. | 15.03B | 11.62% | 17 |
16 | HAL | Halliburton Company | 11.40B | 1.44% | 0 |
17 | CXO | Concho Resources Inc. | 10.30B | 1.57% | 0 |
18 | COG | Cabot Oil & Gas Corporation | 7.02B | 2.35% | 3 |
19 | FANG | Diamondback Energy, Inc. | 6.63B | 3.79% | 1 |
20 | APA | Apache Corporation | 5.06B | 0.77% | |
ave | 4.44% |
トップ20銘柄では、連続増配年数10年以下が多く安定しない銘柄が多いです。
4-1. エネルギーセクタートップ
エネルギーセクター1位はエクソン・モービル(XOM)で時価総額は約19兆1,380億円、2位はシェブロン(CVX)で約16兆8,790億円です。
ちなみに、同セクター日本トップはJXTGホールディングス(エネオス:東証5020)で、時価総額は1兆2,433億円です。このことから米国はケタ違いに規模が違うと分かります。
5. エネルギーセクターETF vs S&P500
エネルギーセクターETF vs S&P500をテストします。
各ETFに10,000ドル(約100万円)投資して、配当再投資をしながら2020年まで保有していた場合のトータルリターンを比較します。
期間はバンガードVDEが設定された2004年から現在までです。
結果、トータルリターンが最も高かったのは、1位S&P500(+246%)、2位バンガードVDE(+32.2%)、3位ブラックロックIXC(+23.1%)でした。
5-1. エネルギーセクターは荒い
上記のテストから分かるのは、エネルギーセクターはボラティリィが高く荒波です。
リーマンショック後に好調かと思いきや、2014に最高値をつけてから現在まで低迷しています。
よっぽどエネルギーセクターの銘柄に自信がある場合を除き、あえてエネルギーセクターを選ぶメリットはありません。
6. エネルギーセクタートップ10 vs S&P500
エネルギーセクタートップ10 vs S&P500です。2012年から2020年までです。銘柄は以下の通りです。
Ticker | Name | Allocation | |
1 | XOM | Exxon Mobil Corporation | 10.00% |
2 | CVX | Chevron Corporation | 10.00% |
3 | COP | ConocoPhillips | 10.00% |
4 | KMI | Kinder Morgan, Inc. | 10.00% |
5 | PSX | Phillips 66 | 10.00% |
6 | EOG | EOG Resources, Inc. | 10.00% |
7 | SLB | Schlumberger N.V. | 10.00% |
8 | MPC | Marathon Petroleum Corporation | 10.00% |
9 | WMB | Williams Companies, Inc. | 10.00% |
10 | VLO | Valero Energy Corporation | 10.00% |
結果、エネルギーセクタートップ10のポートフォリオ(青)のトータルリターンは、10,896ドル(+8.96%)、S&P500は25,097ドル(+150%)でした。
このようにして、エネルギーセクタートップ10は市場平均を下回るリターンとなりました。
7. 騰落率
エネルギーセクターの騰落率です。
エネルギーセクターの下落耐性は、全11セクターのうち下から3番目に弱く、リーマンショックでは-54.2%でした。
また、2014年の最高値から2020年の原油ショックまでで-68.1%です。立ち直れないくらい売られて長期低迷しています。
1 | 2014年7月 | 2020年3月 | 5年9ヶ月 | -68.17% | |||
2 | 2008年7月 | 2009年2月 | 8ヶ月 | 2013年9月 | 4年7ヶ月 | 5年3ヶ月 | -54.29% |
3 | 2008年1月 | 2008年1月 | 1ヶ月 | 2008年4月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | -11.08% |
4 | 2006年2月 | 2006年2月 | 1ヶ月 | 2006年4月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | -9.09% |
5 | 2005年10月 | 2005年10月 | 1ヶ月 | 2006年1月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | -8.95% |
6 | 2005年3月 | 2005年4月 | 2ヶ月 | 2005年6月 | 2ヶ月 | 4ヶ月 | -8.82% |
7 | 2006年8月 | 2006年9月 | 2ヶ月 | 2006年11月 | 2ヶ月 | 4ヶ月 | -8.00% |
8 | 2014年1月 | 2014年1月 | 1ヶ月 | 2014年3月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | -6.13% |
9 | 2006年12月 | 2007年2月 | 3ヶ月 | 2007年3月 | 1ヶ月 | 4ヶ月 | -5.40% |
10 | 2007年11月 | 2007年11月 | 1ヶ月 | 2007年12月 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | -4.19% |
暴落要因 | 開始 | 終わり | エネルギーセクター | S&P500 |
サブプライム危機 | 2007年11月 | 2009年3月 | -54.29% | -50.97% |
下落耐性の最も強い生活必需品セクターの下落が、リーマンショック時では-25%~-29%程度だったことから考えると、エネルギーセクターの下落耐性はかなり弱めです。
7-1. 各セクターの騰落率
各セクターのリーマンショック時の下落率は以下通りです。
セクター | ETF | 最大騰落率 | 原因 | |
1 | 生活必需品 | VDC | -29.37% | リーマン |
2 | ヘルスケア | VHT | -35.10% | リーマン |
3 | 公益事業 | VPU | -38.13% | リーマン |
4 | 通信サービス | VOX | -48.81% | リーマン |
5 | 情報技術 | VGT | -50.58% | リーマン |
6 | 一般消費財 | VCR | -57.11% | リーマン |
7 | 素材 | VAW | -58.18% | リーマン |
8 | 資本財 | VIS | -58.20% | リーマン |
9 | エネルギー | VDE | -68.17% | コロナ・原油 |
10 | 不動産 | IYR | -69.68% | リーマン |
11 | 金融 | VFH | -74.04% | リーマン |
2020年の原油ショックでは、当然エネルギーセクターは猛烈に売られています。
株価が下がって高配当にはなっていますが、セクター全体を考えればあまり手を出さない方が無難です。
米国株でエネルギーセクターは保有するべきか
エネルギーセクターを保有するべきか悩む人も多いと思います。
結論からすると、私的にはよっぽど自信と知識のある人以外保有するメリットは無いと思います。
そもそも、まずセクター全体でトータルリターンが低いのに保有する意味がありません。
↓例えば以下は、エネルギー、生活必需品、ヘルスケア、S&P500の4セクターを2004年から2020年までで比較したトータルリターンです。
結果は、エネルギーセクター(青)が最も低いリターンでした。
このようにして、リターンの低くて荒いエネルギーセクターをあえて保有するメリットありません。
正直、エネルギーセクターにこだわらなくても安定している他のセクターでいいわけです。
相場で勝つには、ハッキリ言ってチャートの安定性も大事なので、わざわざ荒いセクターを選ぶ必要はありません。
もちろん将来エネルギーセクターが爆発的に伸びる可能性もあります。ただ、未来は誰にも分からないので過去から判断します。
適当に保有するのはNG
一つ言えるのは、よく分からなくて知らない銘柄を適当に保有することはやめた方がいいです。
そういった銘柄を保有していると、途中で心理的に不安になって必ず売りたくなります。ヘタしたら暴落したあとに売ることになるので、損失が出る可能性があります。
よく分からないけど、分散のためにどうしても保有したいのであれば、ETFにしておいた方が賢明です。
知らない個別銘柄ほど危ないギャンブルはありません。
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